ラボグロウンダイヤモンドの成長方法には大きく分けて「CVD法(化学気相蒸着法)」と「HPHT法(高温高圧法)」という2種類が存在します。そのため、どちらの方が優れているのかという疑問を持つ方も少なくありません。結論から言うと、宝飾用のラボグロウンダイヤモンドとして、どちらか一方が絶対的に物質として優れているとは言えません。
CVDダイヤモンドの生産者はCVDがより優れていると主張しますし、反対にHPHTダイヤモンドの生産者はHPHTがより優れていると説明する場合があるので、どちらか片方に絶対的な優位性があると感じる人もいますが、高い技術により生産された一定品質以上のラボグロウンダイヤモンドの場合、優劣はほぼありません。
また、製造法がどちらであっても間違いなく化学的、物理的に本物のダイヤモンドです。そのため、CVD、HPHTどちらにも国際的な宝石鑑定機関では「Laboratory Grown Diamond」のレポートが発行され、天然ダイヤモンドと同じ4Cグレードが与えられます。
CVDもHPHTもどちらも、高い技術力によって成長させられたダイヤモンドは優劣なく美しい輝きを持つ高品質なラボグロウンダイヤモンドになります。ではこの両者の違いは何でしょうか?CVDとHPHTの違いは品質よりも生産適正による部分の違いが大きく、成長させるダイヤモンドのサイズ、カラー、シェイプ、また生産地などによってどちらかに適性がある場合が多くあります。
例えば、HPHT法は小さいサイズのダイヤモンド原石を一度に大量に成長させることができ、そのためメレサイズと呼ばれる小さいサイズのダイヤモンドの多くはHPHTダイヤモンドを使用しています。(もちろんメレサイズのCVDダイヤモンドも存在します)
また、HPHTダイヤモンドの方が良いカラーとして成長する傾向があります。一方、CVDダイヤモンドの場合、高いカラーのダイヤモンドを成長させるには技術力が必要になるため、多くのCVDダイヤモンドはアニーリングという方法を使ってダイヤモンドのカラーを向上させています。アニーリングをしないCVDダイヤモンドはAs-Grownと呼ばれますが、HPHTは基本的に全てAs-Grownになります。(アニーリングは人工的なダイヤモンド成長プロセスの追加のワンステップと考えられ、これを区別する必要はないという意見も多くあります。)
無色のCVDダイヤモンドは不純物を含まず全てType2Aに分類されますが、無色のHPHTダイヤモンドの場合、故意または偶発的に成長時に微量のホウ素を含むことがあり、このためType2AではなくType2Bとして分類されるものもあります。しかし、天然ダイヤモンドにも希少なホウ素を含まれるものが存在し、このようなHPHTのラボグロウンダイヤモンドが劣っている理由にはなりません。
また、HPHT法で成長させたダイヤモンドの場合、その多くが燐光を示すことが知られています。これはダイヤモンド自体の外観には影響を与えませんが、鑑別の一つの手がかりとして使用されることがあります。
また、一部の品質の比較的低いダイヤモンドにはHPHT、CVDそれぞれの特徴が発生することがあります。(これらは会員限定資料にて詳しく説明しています)
上記のようにCVDとHPHTにはそれぞれの特徴がありますが、高い技術で成長した高品質なダイヤモンドに優劣はありません。しかし一方で、ジュエリーとしてどちらを使用するか考慮したときには「想定するクライテリア」「調達の容易性と継続可能性」「使用レンジの価格」「コンセプト」などの方向性がポイントになるでしょう
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