ロシアのダイヤモンド鉱山企業であるアルロサは2回の販売をキャンセルし、デビアスはオンラインオークションを年内停止したというニュース、また9月の香港ジュエリーショーが低調だったというニュースによって、世界のダイヤモンド業界では今年の第4四半期に対する不安感が募っています。
しかし、実際の状況はそれほど悲観的ではないように見えます。3年前も同じ状況だったように、インドがダイヤモンド原石の輸入を中止する行為は、ダイヤモンド流通の下流に市場下落に適応する十分な時間を与え、小売業者に在庫を調整する時間を与えるためです。また、アルロサとデビアスの供給調整は、中流と下流に協力するためのものです。
下流の小売業者にとっては、低迷した環境で在庫をコントロールし、慎重に購入することが最優先事項になるでしょう。しかし、下流市場が不振になると考えるにはまだ早すぎるかもしれません。
一般的に9月のダイヤモンド取引は活発な傾向にあります。卸売業者は夏季休暇を終え、また小売業者も年末のホリデーシーズンのために在庫を仕入れる必要があります。しかし今年の9月の取引は多くなく、小売業者は在庫を慎重に管理しているため、ダイヤモンド取引はある程度低迷している状況です。
例えば、米国最大のジュエリー小売企業であるシグネットの7月29日までの在庫総額は約21億ドルで、この数値は昨年同時期より4%低いレベルになっています。昨年8月に買収したBlueNile分を除いて、同社の在庫は昨年の同時期より8%低く、またコロナ前と比較すると20%低くなっています。
しかし、シグネットは依然として在庫管理に非常に慎重で、年1.4回の回転率を維持しています。この業界にとって年1回転は一般的でしょう。
マクロ的に言えば、小売業者は市場判断に基づいて、自分の在庫管理方式を決定します。例えば、2021-2022年に市場が好調だった時期に小売業者は多く在庫を仕入れました。しかし2022年3月以降は市場が下落しているため、小売業者は自然に慎重になります。これはすべてビジネス論理と経済法則に沿ったもので、過度に心配する必要はありません。上記のシグネットが在庫の仕入れに対して慎重になっているのは、上半期の業績が9%下落し、収益が3.2億ドル程度マイナスになったからでしょう。
市場の基礎は経済環境によるものです。ダイヤモンドジュエリー市場にとって、経済環境は最も重要な影響要因であり、米国において8月の米国消費者信頼指数の下落は中流階級の将来に対する懸念を直接反映しています。
このような懸念はアメリカのジュエリー小売業に直接影響し、その結果全米のファインジュエリーとルースダイヤモンドの当月の小売総数が4%減少しました。しかし、裕福層はあまり影響を受けていないため小売単価は上昇し、小売総額では+0.5%程度になっています。(Tenorisデータ)
これが経済環境がジュエリー市場に与える影響で、市場を考える際に最優先に考慮するべきポイントです。業界の未来は大丈夫かという問いは、経済の未来が良くなるかという問いに置き換えられるでしょう。
では、ラボラトリーグロウンダイヤモンドは市場を混乱させているでしょうか?
様々な業界メディアでは、ラボラトリーグロウンダイヤモンドをダイヤモンド市場混乱の原因に挙げ、天然ダイヤモンドの売上が減少した状況として解釈しています。しかしこの見方には偏りがあると考えられます。なぜなら、ラボラトリーグロウンダイヤモンドが本当に天然ダイヤモンド市場を侵食するかどうかは依然として未解決の問題だからです。特に、現在のように経済が不調な状況では特にそう言えるでしょう。
本質的に、ラボラトリーグロウンダイヤモンドは市場全体の拡大をもたらし、天然ダイヤモンドとラボラトリーグロウンダイヤモンド双方の市場競争は必ずしも長期的な状態ではありません。もちろん現段階でラボラトリーグロウンダイヤモンドの汎用型マーケティングが形成されていないため、多くのことは憶測で結論づけることはできません。
しかしシグネットを例に挙げると、ラボラトリーグロウンダイヤモンドの売上は同社の売上の約15%を占めており、グループCEOのジーナ・ドロソスが「我々はラボラトリーグロウンダイヤモンドの販売を通じて顧客に大きな価値を提供する」と述べてる通り、ラボラトリーグロウンダイヤモンドは新しい価値を形成すると考えられます。
小売企業にとっては、どんな分野を市場拡大のための価値とできるかが重要です。そして現在の市場が下落している時、ラボラトリーグロウンダイヤモンドがその市場拡大のための新しい製品になることは現実的なシナリオと言えるでしょう。
前述の通り、経済環境の悪化によってジュエリー市場が悪化しているのは客観的な事実です。そのため「業界の期待が低い」と聞くと慎重になりますが、経済は浮き沈みするのが当たり前なので過度に悲観的になる必要はありません。希望を失わないことが「持続可能な発展」には必要だからです。
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