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国内外を問わず、多くの業界セミナーなどでは頻繁に「Synthetic Diamond(合成ダイヤモンド)」の名称が使用され、またまたそれと対を成すように天然ダイヤモンドを「Real Diamond(本物のダイヤモンド)」と表現することが多くあります。今まで業界でこの名称について公に議論することはほとんどなく、「合成ダイヤモンド」はラボラトリーグロウンダイヤモンドの別の名称として黙認されています。
日本においては新聞や雑誌などのメディアで取り上げる際にも「合成ダイヤモンド」の名称が使用されることが多く、これには「ラボラトリーグロウンダイヤモンドという消費者に馴染みのない名称を使用するよりも、合成ダイヤモンドの方が記事の意図する内容が読者に伝わり易い」という目的があるように見受けられます。しかし、業界セミナー又は業界内部で「合成ダイヤモンド」という名称を使用することには別の意図があるかもしれません。
この問題について今まで公に議論されてはきませんでしたが、それは議論がないという意味ではありません。オックスフォード辞書(下記)によると、Syntheticという言葉の意味は「人工的であり、植物や動物ではなく、化学物質を結合して生成される。同義語はman-made(人工)」となっています。
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正確に解釈するなら、「人工的であり、植物や動物ではない」という部分はラボラトリーグロウンダイヤモンドを表現できますが、「化学物質を結合する」という意味はラボラトリーグロウンダイヤモンドに合致するか依然として論争があります。
広辞苑によると「合成」の定義は「1. 二つ以上のものを混ぜ合わせたり組み合わせたりして、一つのものを作り出すこと。2. 複数の元素から化合物を作ること。また、簡単な化合物から複雑な化合物を作ること。」となっており、炭素元素が結晶化しているラボラトリーグロウンダイヤモンドを描写できるのかは疑問が残ると言えるでしょう。(化合物とは2種類以上の元素の原子を含んだ多数の同一分子が化学結合によって結合した化学物質を指す)
また別の問題として、ラボラトリーグロウンダイヤモンドが市場に登場する以前から、キュービックジルコニアなどの、いわゆる「擬似石」を「合成ダイヤモンド」と呼ぶことがあったという事実があります。そのため、消費者にとって「合成ダイヤモンド」が類似石を指すのか、ラボラトリーグロウンダイヤモンドを指すのかが現状完全に明確になっているわけではありません。
一方で、世界的に信頼のある宝石鑑別鑑定期間ではLaboratory Grown Diamondの名称を使用しています。ベルギーのIGI、HRDはもちろん、アメリカのGIAも当初使用していたSynthetic Diamondの名称の使用を辞め、現在ではLaboratory Grown Diamondの名称へ統一しています。
デビアスが展開するラボラトリーグロウンダイヤモンドジュエリーブランドであるLIGHTBOXもLab Grownの名称を使用しており、Pandoraやその他のラボラトリーグロウンダイヤモンドを使用するブランド、またLVMHに所属するブランドであるFredもLab Grown Diamondの名称を使用しています。
このような状況の中、多くの業界関係者が「合成ダイヤモンド」という名称を度々使用する背景には、戦略的な意図的がある可能性もあるでしょう。しかし、数々の化学的証拠が示す通りラボラトリーダイヤモンドは天然ダイヤモンドと異なる環境で成長した本物のダイヤモンドです。
ラボラトリーグロウンダイヤモンドという若い市場が発展するためには、内部の葛藤と外部からの圧力が必然的に伴います。しかし、ラボラトリーグロウンダイヤモンドの市場が健全に発展し、消費者からの認知が一定のレベルを超えたときには、この問題を過去のものとして思える日が来るでしょう。そのために、ラボラトリーグロウンダイヤモンドを取り扱う企業の皆様に、高い倫理性と知識を持ったマーケティングを引き続きお願いしたいと思います。
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