GIAのラボグロウンダイヤモンド基準変更と影響
- takuya-ito6
- 6月5日
- 読了時間: 4分

今週、GIAは「ラボグロウンダイヤモンドの4C評価基準を変更する」と発表しました。GIAは、過去5年間ラボグロウンダイヤモンドに使用していた4C評価を放棄し、「プレミアム」及び「スタンダード」のいずれかとして評価すると発表し、またこの基準に満たないダイヤモンドにはグレーデングレポートを発行しないと説明しました。GIAがラボグロウンダイヤモンドに対しての4C評価基準を変更したのはこれで3回目になります。
これに対して業界内で多くの反響が起こり、特にラボグロウンダイヤモンド業界の中からは落胆の意見も多く見られます。しかし、物事の解釈は立場や利害関係が異なればその数だけあるので、注意深く事態を理解する必要があります。
BtoBの観点から見ると、企業の選択は利益をベースにしており、感情からくるものではありません。一方で、BtoCの場合、その製品の感情表現が重視されます。
今回のGIAの決定は本質的に利益に基づく決定であり、これは先月にデビアスがLIGHTBOXの終了を発表したのと同じ利益に基づく企業の自由選択によるものです。ラボグロウンダイヤモンドの業界にとって重要なのは市場拡大と産業全体の健全な発展であり、特定の出来事に影響されるのは無意味な消耗です。
2020年頃、ラボグロウンダイヤモンドの価格は現在より高額で、大きいサイズのものほどその傾向は顕著でした。高価なダイヤモンドは300万円を超える価格で販売されており、であれば天然ダイヤモンドと同じ4Cグレードが記載されたGIAのグレーディングレポートの需要があることは明らかです。しかし、ラボグロウンダイヤモンドの価格が下がるにつれて、相対的にグレーディングレポートの価格はコストに占める割合が増加していきます。特にGIAのグレーディングレポートのコストは比較的高く、一部のカテゴリー(サイズ、グレード)のラボグロウンダイヤモンドにとってはグレーディングレポートのコストのほうが高額になるケースもあります。
GIAはラボグロウンダイヤモンドの大部分が狭いグレード範囲に収まると説明し、この新しい基準の根拠について説明しました。当協会のデータでも、実際市場の95%以上のダイヤモンドはGカラー以上、VS2以上のグレードになっています。グレーディングを簡略化することによってGIAはコストダウンすることが可能で、新しい基準のグレーディングレポートは現在のものよりも安価で提供される可能性があります。これは一部の市場ニーズには合致していると言えるでしょう。
一方で、日本のジュエリーブランドと消費者はハイグレードに拘る傾向があります。これは天然ダイヤモンドでも顕著で、米国の消費者はサイズを優先し、GHカラー、VS-SIなどの比較的低いグレードのものを選択するのに対し、日本の消費者はFカラー以上、VS以上のダイヤモンドを求める傾向があります。D VVS1やIFのダイヤモンドに拘る消費者も少なくありません。その為、ハイグレードでも購入しやすいラボグロウンダイヤモンドでは特にハイグレードの需要が高い傾向にあります。
GIAの新グレード「プレミアム」に分類されるダイヤモンドであっても、それがDカラーなのかEカラーなのかが重要な消費者、そしてそれを訴求するブランドが存在することは事実です。
また、GIA自身も指摘している通り現在GIAのラボグロウンダイヤモンドのレポートシェアは5%未満です。現在IGIが90%を超える市場シェアを持っており、ラボグロウンダイヤモンド業界と市場にとってはIGIのプレゼンスが非常に高くなっています。(現在IGIは天然ダイヤモンドと同様の4C基準を採用しています。)その為、IGIの今後の動向にもよりますが今回のGIAの決定が市場全体に与える影響は限定的だと考えられます。加えて、GIAが新しい基準を採用することでラボグロウンダイヤモンドの取り扱いが一部企業にとって促進される事態になることや、新たな価値が生まれる可能性もあります。
いずれにしても、さまざまな企業、機関が何かを決定し声明を発表することは基本的には市場経済合理性に基づくものであり、ラボグロウンダイヤモンドを取り扱う企業の信念や姿勢に影響を与えるものではありません。
Comments