米国ブライダル市場調査、ラボグロウンダイヤモンドが主流に
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米国の大手ブライダル情報プラットフォーム、The Knot Worldwide(TKWW)は2026年2月18日、米国の婚礼実態を把握する年次調査「2026 Real Weddings Study」を公表しました。本調査は、2025年1月1日〜12月31日に挙式・披露宴等を実施した米国カップルの自己申告データに基づき、市場規模、支出、準備行動、外部ベンダー活用、世代別の価値観、婚約指輪の動向などを整理したものです。調査票はThe KnotおよびWeddingWireの会員を通じて募集され、回答者数は10,474組とされています。
その中で最も注目すべき点は、婚約指輪の中心石としてラボラトリーグロウンダイヤモンド(LGD)が選ばれる割合の急拡大です。調査では婚約指輪の中心石がラボグロウンダイヤモンドである割合が61%に達したと報告されており、LGDの選択が過半数を大きく超える水準に達しています 。
この傾向は前年版データでも確認されており、2024年実施分では約52%のカップルがLGDを選んだとする別の統計も存在します。これらは比較年次で継続的かつ加速的な増加傾向を示しており、消費者の選択肢としてLGDが「主流」として定着しつつあることを示す根拠といえます。
また、LGDを選ぶカップルの40%が「中心石がラボグロウンであることを重視した」と回答しており、単なる価格優位性だけでなく、価値観・信念に基づく選択としてのLGD需要が顕在化している点も注目されます。
婚約指輪市場の実態と構造変化
従来、婚約指輪市場は天然ダイヤモンドが圧倒的優位を占めていましたが、近年の調査データはそれを覆しつつあります。米国市場では2019年時点でLGDを選択するカップルは1割台に過ぎませんでしたが、その比率はここ数年で40ポイント以上増加しています。
この変化の背景には複合的な要因があります。一つは価格競争力の強さです。LGDは同等品質の天然ダイヤと比べて概ね大幅に低価格で提供可能であり、同じ予算でより大きなカラット数や高いグレードの石を提案できる点が消費者に強く支持されています。また、若年層においては天然・人工という出自の違いよりも、価値・倫理観・コストパフォーマンスが優先される傾向が強まり、LGDの受容性に寄与していると考えられています。
さらに、デジタルネイティブ世代においては婚礼準備にAI活用が進展していることも関係します。SNSやオンラインプラットフォームを通じた情報探索が主流となる中で、LGDを含む多様な選択肢が可視化されやすい環境が整っていることが需要拡大を後押ししています。
ダイヤモンドジュエリー市場の変化と長期的な影響
この調査が示す市場構造の変化は、単に数字が変わったというレベルにとどまりません。ダイヤモンドジュエリーの価値基準自体が「希少性」より「価値実感(価値観・コスト・倫理)」へとシフトしていることを意味します。米国市場ではLGDの浸透が進み、天然ダイヤモンド中心の従来モデルが相対的に縮小する圧力が強まっています。
業界分析では、LGDの台頭が天然ダイヤモンドの価格構造にも影響を及ぼしており、天然市場の価格は下方圧力に晒されるケースも観測されています。特に大型・高級石ではLGDとの価格差が拡大する一方、消費者の価格敏感度の高まりが価格調整を促す構造になっています。
また、倫理・エシカル消費の潮流が婚約指輪選択にも浸透している点は、ラボグロウンダイヤモンドの価値提案を強化する文脈となっています。天然ダイヤモンドのサステナビリティ・トレーサビリティの課題と比較される形で、LGDは「環境配慮・コンフリクトフリー」といった価値提案で選択される傾向が強化されているのです。
日本のジュエリー業者が抑えるべきポイント
この米国調査の内容は、日本のジュエリー業者にとっても多くの示唆を含みます。
第一に、LGDを中心とした商品ポートフォリオの再構築が求められることです。消費者の価値観が変化する中、LGDを主要な選択肢として訴求することは、単なる価格競争策ではなく、顧客の価値観に寄り添うマーケティング施策として機能します。また、カスタマイズ性・デザイン性の強化はLGD選択の魅力を高め、単純な価格優位性以上の価値を提供する鍵となります。
第二に、コミュニケーション戦略の見直しが不可欠です。消費者は情報をオンラインで収集し、比較検討する傾向が強いため、LGDの価値・品質・背景を分かりやすく伝えるコンテンツの整備が重要です。特に婚約指輪はカスタマーエクスペリエンスが購買決定に大きく影響するため、ストーリーテリングや証明の透明性を高める取り組みが必要になります。
第三に、倫理性・サステナビリティを訴求するブランド戦略は今後の競争優位に直結します。環境・社会的な価値観を消費者が重視する傾向は世界的な潮流であり、日本市場でも浸透が進む可能性があります。LGDを含むサステナビリティ指向のラインナップは、未来の顧客接点を確保するうえで有力な武器となるでしょう。
米国のブライダル市場調査が示すように、婚約指輪の中心石としてラボラトリーグロウンダイヤモンドが圧倒的な存在感を示し始めていることは、ダイヤモンドジュエリー市場の価値基準の転換点を象徴しています。



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