デビアス「LIGHTBOX」撤退が意味するものとは
- takuya-ito6
- 5月9日
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デビアスは2025年5月8日、同社のラボグロウンダイヤモンドブランドである「LIGHTBOX」を閉鎖する計画を発表しました。

同社は約1年前に、同社のラボグロウンダイヤモンド部門であるエレメントシックスでの宝飾用ラボグロウンダイヤモンドの生産を停止すると発表し、今後は産業用途に注力すると発表していました。当時、「LIGHTBOX」ブランドに関しては継続すると発表しており、ブランドを継続に十分なラボグロウンダイヤモンドの在庫を確保していると述べていました。
デビアスはこの「LIGHTBOX」によって2018年にラボグロウンダイヤモンドジュエリー市場への参入を開始、当時市場に大きな衝撃を与えました。しかし、当時多くのメディアや業界関係者が示唆していたように、このデビアスの戦略は「天然ダイヤモンドとラボグロウンダイヤモンドを違う商品として区別する」ことにあったように思います。つまり、天然ダイヤモンドをより価値の高い、エンゲージメントに値する製品として宣伝し、一方でラボグロウンダイヤモンド製品を「手頃な価格のファッションジュエリー」と位置付けました。
これは、LIGHTBOXの発表時の「天然ダイヤモンドがレッドカーペットのドレスだとしたら、ラボグロウンダイヤモンドはジーンズのようなカジュアルな装い」と形容したことからも読み取れます。
一方で近年、中国市場での天然ダイヤモンド需要の急激な低下、ラボグロウンダイヤモンドの供給増加という二重の要因による天然ダイヤモンドの価格下落により、デビアスの収益は現象、デビアスの親会社であるアングロ・アメリカンはデビアス事業を売却または株式公開によって撤退させる選択肢を検討していますが、その計画が順調ではないという状況です。
そのため、デビアスとしては事業の合理化と自社のリブランディングという戦略に沿って、ラボグロウンダイヤモンドジュエリーの小売事業から撤退するものと思われます。またこの宝飾用ラボグロウンダイヤモンド事業からの撤退は同社の象徴的なスローガンである「ダイヤモンドは永遠の輝き」を支える戦略への回帰だと言えます。
デビアスにとって天然ダイヤモンド企業としてのポジショニングを再確立することが急務であること、またラボグロウンダイヤモンドの生産コストが十分下がっており、天然ダイヤモンドの価格体系から外れつつある現状をで鑑みると、デビアスにとって「LIGHTBOX」が当初の一定の目的を果たしたともいえ、今回の撤退に至ったものと考えられます。
これは言い換えると、デビアスによってラボグロウンダイヤモンドの一定の認知が市場に与えられ、そして今後天然ダイヤモンドとは異なる市場としてラボグロウンダイヤモンドジュエリーの市場が拡大していく可能性を示唆してます。
もちろんダイヤモンドジュエリーである以上、一部のカテゴリーは競合として重複していく可能性がありますが、天然ダイヤモンドはラボグロウンダイヤモンドにはない価値を強調し、一定の市場を築き、ラボグロウンダイヤモンドは天然ダイヤモンドとは異なる価値を訴求し新たなアイテムを開発することによって個別に拡大できるということです。
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