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FTCのガイドラインとは何か?





2018年、FTC(米国連邦取引委員会)はジュエリーガイドラインを修正し、天然ダイヤモンド業界とラボグロウンダイヤモンド業界に論争を引き起こしました。最近ではインドのGJEPC(宝石・ジュエリー輸出促進協議会)がこのガイドラインを準拠すると発表し、このFTCのガイドラインが大きな影響力を持つと同時に世界のジュエリー業界の一つの基準になっています。


多くのラボグロウンダイヤモンドジュエリー企業はこのFTCの修正されたガイドラインを参照し、「連邦取引委員会も本物のダイヤモンドと認めている」と説明しますが、このガイドラインの内容を正しく理解している人は多くありません。


このブログでは、改めてこのFTCのガイドラインを解説し、ラボグロウンダイヤモンド取り扱いにおける基準を確認します。


まず最も重要な点として、ダイヤモンドの定義から「天然」が外されたことが挙げられます。修正以前のガイドラインではダイヤモンドの定義を“a natural mineral consisting essentially of pure carbon crystalized in the isometric system.”(等方晶系で結晶化した純粋な炭素から本質的に構成される天然鉱物)としていましたが、修正後には天然の条件が外されています。これに関してFTCは "the Commission no longer defines a “diamond” by using the term “natural” because it is no longer accurate to define diamonds as “natural” when it is now possible to create products that have essentially the same optical, physical, and chemical properties as mined diamonds."(同委員会はもはや「ダイヤモンド」を「天然」という用語で定義していない。なぜなら、採掘されたダイヤモンドと本質的に同じ光学的、物理的、化学的特性を持つ製品を作ることが可能になった今、ダイヤモンドを「天然」と定義することはもはや正確ではないからだ。)と指摘しました。


一方、セクション23.24ではラボグロウンダイヤモンドの説明において「real(本物)」「genuine(正真正銘)」「natural(天然)」という装飾語を使用しないように警告しています。genuineには「真の」というニュアンスが強く、英語圏においては本革の製品に「Genuine leather」と記載されることからも分かるように、主に人工的ではないものに適用されるため、誤解を防ぐため使用を禁じているものと考えられます。


加えて、セクション23.23では、ダイヤモンドを含む宝石の名称単体を人工宝石に使用しないように警告しています。つまり、ダイヤモンドの定義から「天然」が除外されましたが、ダイヤモンドという単語単体での使用は現時点では依然として天然であることを示唆します。その代わり、人工宝石を記述する場合、その宝石の名称の前に「laboratory-grown(ラボラトリーグロウン)」「laboratory-created(ラボラトリークリエイテッド)」「[manufacturer name]-created([製造者名]クリエイテッド)」「synthetic(合成)」「imitation(イミテーション)」「simulated(模造)」などの装飾語を、その宝石の名称と同等に目立つように付けるよう指示されました。


ここで「イミテーション」や「模造」が推奨されていることに違和感を感じると思います。しかしそれに続く部分では「ラボラトリーグロウン」「ラボラトリークリエイテッド」「([製造者名]クリエイテッド)」「合成」の名称をその装飾語に続く宝石と本質的に同じ光学的、物理的、化学的特性を持つ製品にのみ使用するようアドバイスしています。ここから、「イミテーション」や「模造」はその他人工石を含んだガイドラインであることが理解できます。つまり、ラボラトリーグロウンダイヤモンド、という名称をキュービックジルコニア、モアサナイトなどには使用できません。


また「cultured(養殖)」という名称については消費者が自然に作られたものであると誤認する可能性があることから使用しないように推奨されています。しかし、この装飾語を「laboratory-created」などと併用した場合(例えばlaboratory-created cultured diamond)、消費者が誤解する可能性が大幅に下がるため使用できるとしています。


「養殖」の使用可否に関しては特に米国のラボグロウンダイヤモンド企業を中心に議論を引き起こしました。なぜなら米国の一部の業者は「cultured diamond」という名称を使用していたからです。ラボグロウンダイヤモンドは一旦「種」を置き、適切な熱と圧力を与えると「自然の成長プロセスを作り出す」ため、これは真珠の養殖と同様に人間がダイヤモンドの成長を可能にする環境を作り出していると主張しました。また「養殖」の辞書の一般的な定義は「管理された条件下で育成または製造された」という意味であり、これはラボグロウンダイヤモンドと養殖真珠の両方を正確に表していると述べています。


加えて、laboratory-created cultured diamondなどの長い名称は特に携帯端末などでのプロモーションに不利になると主張しています。


一方で、ラボグロウンダイヤモンドの製造は「人間と自然の共生関係」を伴う養殖真珠の成長とは異なり、管理された条件下で「工場で始まり、工場で終わる」ため「天然」の要素がなく、「養殖」を養殖真珠のような天然の「有機プロセス」から生じる製品のみを説明するように制限すべきであるとの主張もあります。


また、「synthetic(合成)」の使用に関してIGDA(国際グロウンダイヤモンド協会)は誤解を招くものであると主張し、ラボグロウンダイヤモンドの説明に「合成」を使用することを禁止するようFTCに勧告しました。


IGDAは、競合他社が「合成」や「模造」という言葉をあえて使用してラボグロウンダイヤモンドをけなして消費者を混乱させており、また消費者が合成という言葉がガラス、プラスチック、またはキュービックジルコニアなどの模造品であると誤解していると主張しました。例えば2016年の市場調査では、回答者の56%が「合成ダイヤモンド」は「採掘されたダイヤモンドのように見える模造品または偽物」であると考えていました。この調査では、消費者が「合成ダイヤモンド」を説明する際に最も頻繁に使用したのは「偽物」、「人工」、「キュービックジルコニア」、「安物」、「人工」であることも示されています。IGDAは、別の調査では、回答者のほとんど(74%)が「ラボグロウンに対する教育を受けた後でも」「合成ダイヤモンド」は「偽物」または「人工」であると考えていたと述べています。


最終的にFTCはラボグロウンダイヤモンドの推奨装飾語のリストから「synthetic(合成)」を削除しました。一方で「synthetic(合成)」の使用自体は禁止はされてはいません。禁止されているのは「合成」という言葉をあえて使用して、ラボグロウンダイヤモンドが「本物の」ダイヤモンドではないことを暗示することです。例えば競合他社がラボグロウンダイヤモンドではなく天然ダイヤモンドを顧客に購入させたい場合、「合成ダイヤモンドを買わずに本物のダイヤモンドを購入してください。」などと説明することはラボグロウンダイヤモンドダイヤモンドが偽物であることを暗に示すため、許可されません。


これらを考慮し、当協会では「合成」「養殖」の使用は推奨しておりません。また、消費者に誤解を与える可能性のある単体での「ダイヤモンド」の使用、またその他の説明を含めずに天然であると誤解させるような「本物のダイヤモンド」の使用に関しても注意をしていただくよう会員各位にはお願い致します。


FTCのガイドラインを正確に理解し、また当協会のガイドブックに則り、消費者に誤解を与えないよう、ラボグロウンダイヤモンドの消費者信頼のためにご協力をお願いできますと幸いです。








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