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パンドラの新CMから見るラボグロウンダイヤモンド市場の展望



世界100カ国以上で自社ブランドを展開するジュエリー企業「パンドラ(PANDORA)」は昨年末に、ラボグロウンダイヤモンドのプロモーションとして新しいCMを公開しました。



CMには女優のパメラ・アンダーソンやモデル、インフルエンサーが複数出演しており、「愛と幸福だけでは足りない」「薬指にもどの指にも」「ダイヤモンド、ダイヤモンド、ダイヤモンド!」と語りかけています。また、「ダイヤモンドは女の子とベストフレンド?(マリリンモンローの有名な曲にかけている)」と問いかけ「ダイヤモンドはみんなのもの」「ダイヤモンドは(結婚など特別な時だけでなく)すべての理由のためのもの」「ダイヤモンドは全てのため」と答えます。


このCMで意図されているのは「ダイヤモンドは特別な機会だけのものでなく、もっと楽しめる」「ダイヤモンドは一つだけではなく何個でも手に入れていい」「ダイヤモンドは男性も女性もどんな人でも楽しめるもの」というメッセージで、ダイヤモンドジュエリーの楽しみ方を拡大させたいというパンドラの意図が汲み取れます。


事実、昨年8月のコレクション発表会でパンドラのクリエイティブディレクターのフランチェスコ・テルツォは「私たちは(中略)より多くの人にラボグロウンダイヤモンドのパワーと美しさを毎日体験してもらいたいと思っています。」と述べています。


パンドラは過去2年間、ラボグロウンダイヤモンド市場へ精力的に進出しており、事業を展開しているすべての主要都市でラボグロウンダイヤモンドの宣伝に数百万ドルを費やしています。


パンドラのラボグロウンダイヤモンドへの注力、またプラダなどのファッションブランドによるラボグロウンダイヤモンドの採用は、世界市場においてラボグロウンダイヤモンドが新たなステージに入りつつあることを示唆しています。


ジュエリー業界のコンサルタントや企業幹部たちは、ラボグロウンダイヤモンド業界は、ファッションジュエリーとブランド開発によって市場成長を刺激する新たな段階に入りつつあると指摘しています。「以前は(ラボグロウンダイヤモンド製品は)ブライダルに重点が置かれていたのに対し、現在ではより多くのファッション製品が導入されています。」と、ジュエリー業界の顧問会社エッジ・リテール・アカデミーの事業開発ディレクター、シェリー・スミスも指摘しました。


過去3年間において、特に米国のブライダル市場はラボグロウンダイヤモンドにとって大きな成長カテゴリーでした。米国のウエディング情報誌「Tha Knot」の調査では、2023年に米国で販売された婚約指輪のセンターストーンの約46%がラボグロウンダイヤモンドであると報告されており、これは2019年から比較すると4倍となっています。


一方でラボグロウンダイヤモンドの卸売価格は低下しており、アメリカの著名なダイヤモンド業界アナリストであるエダン・ゴランのデータによると、1~1.49ctのラボグロウンダイヤモンドの卸売価格は2023年に60%下落し、2~2.99ctは65%下落しています。またそれを反映し、デビアスのラボグロウンダイヤモンドブランドであるLIGHTBOXでは価格を下げるテストを実施しています。


この傾向は特に米国市場においてラボグロウンダイヤモンド市場形成黎明期の、単に天然ダイヤモンドとの価格比較から販売を伸ばしていた傾向から、よりファッションジュエリーへの転換とブランド形成を促すものになっており、またそれによって新たな市場を形成する機会になっています。


しかしこの傾向は、特にラボグロウンダイヤモンド市場先進国である米国市場の状態を表しており、日本のラボグロウンダイヤモンド市場がこのステージに現在到達していないと考えられます。


米国では多くのプレイヤーがこの領域に参入したため消費者認知が高まり、ラボグロウンダイヤモンドへの関心が大きくなっています。しかし日本においてはラボグロウンダイヤモンドの消費者認知は以前低く、このステージに到達するまでにまだ期間を要するものと考えられます。


一方で日本のラボグロウンダイヤモンド市場は米国と同じ順序を辿るのではなく、いくつかの段階が同時進行的に発生するでしょう。つまり、ブライダル市場の形成とファッションジュエリー市場の形成、ブランド化と差別化、消費者認知が並行して進むものと思われます。


海外ブランドがラボグロウンダイヤモンドをファッションジュエリーとして採用し、それが日本に入ってくることも十分予見できるため、この傾向は今後進んでいく可能性があるでしょう。


その為今後日本のラボグロウンダイヤモンド市場においては「ラボグロウンダイヤモンドの特性を活かした展開」「ブランディング」「プロモーション」の重要度が増していきます。ラボグロウンダイヤモンドの卸売価格が一定の水準まで下がった現在、必要なことはラボグロウンダイヤモンド製品同士の過度な価格競争ではなく、価値の創造にあります。


実際、製品の価値は「素材の原価」ではなく「製品の創造性」にあります。素材の原価が製品価格を決定するのであれば、多くのアパレルブランドは大幅な値下げを強いられますが、そうはなりません。ジュエリーも同様、創造性とブランディングによってその価値を生み出していく必要があります。


世界的なブランドがラボグロウンダイヤモンド市場を後押ししている現在、消費者認知と価値形成のために業界が力を合わせて取り組むべき時期に来ています。



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