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デビアス「LIGHTBOX」のエンゲージメントリング終了が意味することとは


デビアスのラボグロウンダイヤモンドブランドである「LIGHTBOX」は、今年の6月にラボグロウンダイヤモンドを使用したエンゲージリングのラインをブランドに追加、トライアル販売を開始していた。


しかし9月、この分野のビジネスの見通しが不透明という理由で、短い期間でのトライアル販売を中止している。


「LIGHTBOX」はデビアスが2018年にデビューさせたラボグロウンダイヤモンド専門ブランドだ。今回のトライアル終了の理由を考えるにあたり、このブランドのデビューの背景を理解することは助けになる。


2010年代後半からアメリカを中心にラボグロウンダイヤモンドの市場が形成され始め、天然ダイヤモンドの市場に影響を与え始める。デビアスは世界最大の「天然ダイヤモンド鉱山企業」としてラボグロウンダイヤモンドに対して2つの異なる、そして相反する見方と意図を持っていたと考えられる。それは『ラボグロウンダイヤモンドの市場シェアを取ること』と『ラボグロウンダイヤモンドの価値を天然ダイヤモンドと差別化すること』だ。


その証拠に、LIGHTBOXはそのデビュー発表の時から「ラボグロウンダイヤモンドは天然ダイヤモンドと異なりカジュアルなものである」という主張を貫いている。「天然ダイヤモンドが特別な日に飲むシャンパーニュであれば、ラボグロウンダイヤモンドは日常に飲むカヴァ(スペイン産の比較的安価なスパークリングワイン)であり、天然ダイヤモンドがレッドカーペットのドレスであれば、ラボグロウンダイヤモンドはジーンズなどのラフでカジュアルなファッションだ」というようなデビュー時の説明からもその意図が伺える。


つまり、LIGHTBOXは天然ダイヤモンドとラボグロウンダイヤモンドのポジショニングという役割を担っており、デビアスのビジネスの主軸は当然天然ダイヤモンドにある。デビアスはデビュー当時からLIGHTBOXのラボグロウンダイヤモンドの価格をサイズ問わず$800/ctとしており、サイズと価格の関係が指数関数的な天然ダイヤモンドに比べて「希少性がない」ことを強調していた。


しかし、アメリカ市場を中心にラボグロウンダイヤモンドは天然ダイヤモンドのブライダルジュエリーのポジションを獲得していく。2022年にはアメリカで4組に1組がラボグロウンダイヤモンドのエンゲージリングを購入したという調査記録もあり、この影響はデビアスにとっても無視できなかったものと思われる。


そのためデビアスは「マーケット調査」という名目でラボグロウンダイヤモンドのエンゲージリングの販売をスタートした。しかしこれが天然ダイヤモンド業界から大きな反発を招くことになる。つまり、LIGHTBOXが当初から主張してきた「ラボグロウンダイヤモンドは特別な日のためのものではない」というポリシーを覆し、天然ダイヤモンド業界を裏切ったと捉えられたのだ。


結果的にデビアスは約3ヶ月でこのテスト販売を終了、「ラボグロウンダイヤモンドはエンゲージリングビジネスとして持続性がない」と説明した。また「ファッションジュエリー分野としてラボグロウンダイヤモンドは将来性がある」と付け加えた。この動きはデビアスにとって(最初から意図したものかは不明だが)少なくとも2つの意図があると考えられる。


一つは、天然ダイヤモンド業界からの反発を抑えること、そしてもう一つは実際に参入してから撤退することで「エンゲージリングには天然が適している」というポジショニングのメッセージを伝えることだ。実際デビアスはエンゲージリングの撤退と同時に天然ダイヤモンドのプロモーションへの多額の投資を発表している。


つまり今回のLIGHTBOXのエンゲージリングの参入と撤退は極めて戦略的なものであり、ラボグロウンダイヤモンドのブライダルジュエリー分野のポテンシャルを否定するものではないと考えられる。マーケットは常に流動的なため状況は変化し続けるが、消費者の価値観が多様化する現在においてラボグロウンダイヤモンドのエンゲージリングは一定の需要とポジションを保ち続けるだろう。



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